陸棲ラン藻(シアノバクテリア)
Nostoc commune(イシクラゲ)
芝の中や側溝を注意深く見てください。雨の日にはゼリー状の黒っぽい固まり、晴天時には乾燥ワカメ状のものが見られます。これは、陸棲シアノバクテリアNostoc commune(ノ
ストックコミュン;和名イシクラゲ)の藻体の固まりです。乾燥にたいへん強く、
地球上のどこにでも生育しているコスモポリタンであると信じられています。身近によく見かける生物ですが、これまでに学術的な研究の対象となっていません
でした。金沢大学角間キャンパスより採集したNostoc communeを純粋培養できるようにし、研究に用いています。
研究紹介 https://www.stream.kanazawa-u.ac.jp/v/WxeO7EEK7n1L
(1)Nostoc commune(イシクラゲ)の系統地理学的研究
塩基配列解析から遺伝的に多型があることが分かってきました。
(2)Nostoc commune(イシクラゲ)のストレス耐性の研究
光合成機構の極限的なストレス耐性に注目して、その仕組みを研究しています。
この生き物の生きざまのとおり、乾燥と水和を繰り返しても光合成活性が損なわれません。
そのしくみのひとつは、多糖を主成分とした細胞外マトリクスに細胞が包まれていること。(新規の天然型保水材として使えるかな?)
もうひとつは、乾燥時にはトレハロースをためていること。
(3)Nostoc commune(イシクラゲ)の紫外線防御物質の研究 Nostoc commune(イシクラゲ)は2種類の紫外線吸収物質を持っています。ひとつはUV-B (330 nm) を吸収する物質です。
この物質は多くの生物で知られているMAAの一つです。もう一つは UV-A (380 nm) を吸収する物質です。このUV-A吸収物質は
シアノバクテリアで知られているスキトネミンの一つです。(天然素材の化粧品に使えるかな?)
陸棲シアノバクテリアNostoc commune の藻体 (雨上がりの金沢大学角間キャンパスにて撮影)
ゼリー状の物質(細胞外マトリクス)に包まれている。
左図:野外より採集して泥などを良く洗ったところ。
右図:高倍率の顕微鏡で観察すると(名古屋大学 杉浦花菜さんより)
数珠状につながった細胞が見える。ひとまわり大きな細胞は窒素固定をするヘテロシスト。